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 五月二十六日~二十七日、福岡国際センターならびに福岡国際会議場にて「人権社会確立第34回全九州研究集会」が開催された。初日は、ノーベル文学賞作家である大江健三郎氏による「明日に伝える言葉」と題した記念講演が行われた。大江氏は、国益や平和を口実に再び戦争への道を歩もうとしている我が国の時代状況の中で、様々な現場における人権を守る取り組みを続けることは全体主義的な時代に対して健全な思考を保つ大切なものであることを語られた。

 また、御子息であり、作曲家である光さんについて語られた。瀕死の重体の中で誕生し、障害を持って生まれてきた光さんは、五歳まで言葉を発することがなかった。しかし、庭に毎朝訪れる鳥の声に興味を示す光さんに鳥の声を録音したレコードを毎日聞かせる内に、レコードのままに、鳥の声と鳥の名前を言葉として発するようになったという。その後、光さんは、「音」への関心を強め、作曲家になるのであるが、ささやかであっても、ハンディを抱えた一人の人間が表現している「心の関心」を注意深く見つめることが、光さんのその後の成長への大きなきっかけとなったことを語られた。

 記念講演の後、美野島の光應寺さんを会場に「2013年度 大谷派のつどい」が「身元調査お断り・過去帳閲覧禁止運動の取り組みについて」を主たる内容として開催された。つどいには、日豊、久留米、長崎、熊本、鹿児島の各教区、また、沖縄開教本部、解放運動推進本部から52名が参加した。「久留米教区の取り組みについて」を発題として、各教区における課題が活発に話し合われた。

 鹿児島教区北薩組では、身元調査お断りプレートについての指示事項について組の婦人会で読み合わせを行ったこと、さらにご門徒さんとも読み合わせを行い、そうした取り組みを続けることの重要さを報告された。また、久留米教区からは、現在においてもな様々な目的のもとに身元調査は行われており、その手口が巧妙であることからプレートの掲示や閲覧禁止ステッカーの貼付は、身近に始められ効力があるものとして大切であることが報告された。


 二日目は、福岡国際会議場を会場に分科会が開催された。8分科会の内、「人権確立に向けた宗教の現状と課題」分科会においては、2012年にNHKのテレビ番組で明らかとなった、浄土真宗本願寺派寺院での過去帖閲覧問題について問題の経緯と宗派としての取り組みと課題について報告された。


 二日間にわたる集会は、混沌とした時代の中で、成果や効率の名のもとに見失われてしまいがちな、いつでも、どこでも、誰においてもある一人の人間としての尊厳を見つめ直す時間であった。また、差別法名をはじめ過去帖閲覧問題など現代にも続く寺院における課題を他の誰でもない当事者として問われる時間であった。「学ばないことは、差別の現状を肯定することと同じこと」集会に参加されたお一人の言葉を大事にしたい。

img_1306.jpg大谷派の集いin光應寺(博多区・美野島)